堕落論

Black Abbey IPA

アビイ酵母のフルーティな特性を活かすために、従来の伝統的な使用方法から解放した、独創的且つ、見る人にとっては退廃的とも思われる可能性を孕んだオリジナルのビアスタイルを「Black Abbey IPA」と呼ぶことにしました。経験や知識は無形の財産でありながら、取り込んだその瞬間から過去の価値観へと古びていきます。囚われたるタブーを捨て、固着した思想や観念を一枚一枚丁寧に剥がしていった先に、姿を現したのは前例に縛られないビールでした。評論家の方々がこれをカスケーディアンダークと呼ぼうが、アメリカンブラックエールと呼ぼうが構いません。そもそも、このビールは決められた枠の中で描こうとしたレシピではない「はみ出し者」なのです。焦げ臭いくらいに効いたローストのフレーバーに、ホップはオークやココナッツのフレーバーを持ち合わせたNeomexicanus系(ホップの亜種と従来のホップとの交配から生まれた新しい系統のホップ)を2種類合わせました。この組み合わせは、まるで麻の袋、コーヒー豆が入っていた木樽、香ばしい香りが漂う珈琲焙煎所の雰囲気そのもの。人によってはこれが喫茶店だったり、カフェだったりするのかもしれません。とにかく落ち着きがあって、リラックスできる香りです。真っ黒に染まったビールは、アビイ酵母で醸されていて、そこそこ高いアルコールも含まれていれば、黒糖も入っていて、ホップのトロピカルやダンクなフレーバーまで共存しています。これが妙にまとまりが良く、無秩序のようで整然としているのです。型に嵌っていては、出会えなし得なかった味わいになったと思います。

ABV
7.5
IBU
50