赤みを帯びたビールをつくることができる特殊なモルト「Red X Malt(レッドエックスモルト)」を使用したのは久しぶりのことだったので胸が高鳴りました。この特殊な麦芽からは赤みの他に、豊かな麦芽の風味と、フルボディな飲みごたえがビールにもたらされます。ただし、今回はRed X Maltの風味をそのままに、発酵の旺盛なセゾン酵母を使用して、ドライな仕上がりを目指しました。これまでの使用経験から、風味が豊かな分、ドライな設計にすることで釣り合いが取れると考えました。ホップは、Sabro(サブロ)というユニークな品種をメインに使用しています。このホップは、Neomexicanus(ネオメキシカヌス)という過去100 万年にわたってニューメキシコ州の山岳地帯で自生してきたホップの亜種と、通常のホップとの交配により誕生した品種です。多彩なキャラクターを持っており、通常はライチ、ココナッツ、トロピカルフルーツ、ストーンフルーツ、シトラスなどのフレーバー、そして、杉、ミント、クリームのニュアンスなどとも言われますが、これだけ的を絞れない例えの数々はその複雑性を物語っています。私たちが導き出した「Red X Malt」、「セゾン酵母」、「Sabro Hop」が織り成す味わいは先述したどのキャラクターとも違う性格になりました。もっとも印象的なフレーバーを例えるなら杏子やストロベリーのジャムが相応しいかもしれません。個々の組み合わせにより発現したフレーバーと理解しています。ボディはドライな仕上げでカラカラと、甘い果実のテイストに惑わされ、ハイアルコールによって高まる熱さと高揚感は、砂漠の中にオアシスを発見したときの歓びに相応しいことでしょう。
- ABV
- 10.0
- IBU
- 45