今回のビアスタイルはMärzen(メルツェン)です。ドイツ語で「3月のビール」を意味します。まだ冷蔵技術がなかった時代、ドイツの醸造家たちは夏の醸造が禁じられていました。そこでまだ涼しい3月のうちに夏を越せる頑丈な(ややハイアルコールな)ビールを仕込み、じっくりと貯蔵して、秋のオクトーバーフェストの喧騒の中で盛大に飲み干しました。今回はそんな伝統を踏襲して3月末に仕込みを行っています。
アメリカのクラフトビール界でのメルツェンは、しっかりアンバーな色味をつけて、「濃くて甘いラガー」として作られることが多い印象ですが、今回はそういった路線ではなく、伝統的なレシピを参考に、それでいて日本人が飲んでもドリンカブルなビールになるように意識しました。色味調整のためのカラメルモルトなどは可能な限り少量に抑え、モルトはシンプルにしながら、マッシュの一部を一度沸騰させるデコクションの技法や、煮沸時間を通常より長くする等の工夫でモルトのコクと深みを引き出しています。
グラスを近づけると、香ばしく甘い、圧倒的な麦の香りが広がります。ビスケットのような風味もありますが、これは熟成のなかで変化していく部分かもしれません。口当たりは滑らかでスムーズ。本場よりアルコール度数をやや控えめにすることで、重厚な満足感は芯に残しつつ、何杯でもおかわりできる飲みやすさに仕上げています。オリジナル品種のホップ「HKB001」の穏やかな苦味が全体の甘みを品よく支え、喉を通り過ぎた後にはお腹がじんわり温まるような心地よい余韻が残ります。
本来は秋のお祭りを見据えた設計のビールですので、今後の熟成でさらに良い状態になることが期待されます。ですが、もうビールは十分においしく、われわれには我慢ができません。遠くから聴こえてくるお祭りの足音に耳を傾けながら、まずはお先に味見はいかがでしょうか?
- ABV
- 5.5
- IBU
- 27
