黒い外観に見えるかもしれませんが、光に透かすとダークブラウンで、光の当たり方によっては、ハイライトに赤またはガーネットが現れます。実は、この絶妙な色合いを狙って発現させることは、容易ではありません。感覚に頼らない、確かな色度計算と、水のイオン濃度など科学的アプローチが目的の色合いを実現してくれます。とは言っても、醸造には予想外の出来事が付き物であります。やはり少しばかりの不安はありましたが、計算通りの色合いとハイライトの輝きに安堵しました。グラスの上部にはクリーム色のきめ細かな泡がしっかりと昇ってきます。コーヒーやパンのようなモルトの味わいが豊かで、ミュンヘンのデュンケルにも似ていますが、よりローストが強く、ボディもそれほど強くありません。また、ドイツのシュバルツとも比較されますが、チェコダークの方がモルトの複雑性がより強いのが特徴です。トースト、パン、キャラメルなどのモルト由来の味わいは芳醇ですが、決して甘すぎず、それほど強すぎないローストのフレーバーが愉しめます。適度なホップの苦味がバランスを取りますが、ボヘミアンピルスナーと同様に、チェコのピルゼンの水はミネラル分があまり含まれない「軟水」のため、ホップの苦みが強調されず、滑らかなモルトの味わいが引き出されます。モダンなホップを使用して、オリジナリティを出すこともできましたが、まずは皆さんにスタンダードなチェコのダークラガースタイルを知ってもらいたかったため、ノーブルホップのザーツとテトナンガーを使用し、王道中の王道に挑みました。黒ビールと言っても、色んな黒ビールがありますので、「黒は苦手」なんて言わずに、ぜひ試してみてください。Bohemian Pilsnerの夜の姿をご覧あれ。
- ABV
- 5.0
- IBU
- 28