HOP KOTAN ORIGINALS+第14弾では、アイヌ語で「穀物」を意味する【amam-アマム-】という名前を授けました。今回は1年半ぶり、2回目となる上川大雪酒造との異酒コラボレーションです。上川大雪酒造は、上川地域を中心とした北海道産の酒造好適米と、大雪山系の天然水で仕込む “飲まさる酒”づくりで高い評価を得ている北海道上川郡上川町の酒蔵です(「飲まさる」は、北海道弁で「つい飲んでしまう」という意味)。予てから、お互いのお酒を飲み交わす機会が幾度もあり、また「飲まさる酒づくり」、「引き算の美学」など、共通の価値観を持っていることからコラボレーションが実現しました。昨年は、上川大雪酒造の純米大吟醸から生まれた「酒粕」を使いましたが、今年は「米麹」と「日本酒酵母」を使ったチャレンジとなりました。リリースまで、延期に延期を重ねた今回の【amam-アマム-】ですが、技術的なアドバイス、原材料のご提供、仕込みのお手伝いをしてくださった上川大雪酒造の皆様にはこの場を借りて深く感謝申し上げます。そして、大変お待たせいたしました。通常は、発酵タンク内に米麹を投入する方法が一般的ですが、その方法にはいくつかの問題点を抱えています。数ある問題点の中で最も懸念されるのは、缶や瓶、樽などの容器の中に詰めたビールの発酵が終わらず、過剰な圧力が生じてしまうというところにあります。それにより、自主回収になっている製品や事例を何度も見てきました。これらの危険性を無視できないことから、私たちは全く新しい手法を使用することでその問題の解決を図ったのが今回のチャレンジです。詳しくは企業秘密になりますが、おそらく世界初の試みだったと回顧しています。これ以上は、さらに技術的で、難しい説明となってしまうため、詳しい製法についての話はこれくらいにしておきます。ご興味のある方は忽布古丹醸造の醸造士を掴まえて聞いてみてください。このビールは日本酒酵母(きょうかい7号酵母)を使用して、華やかな吟醸香を取り込みつつも、上富良野産ホップをドライホッピングして、吟醸香とホップの融合を目論みたビールです。いまや幻とされる「花酛(はなもと)」という東北に伝わるどぶろくの製造方法では、和製ホップである「唐花草(からはなそう)」を用いていたという話を上川大雪酒造の杜氏から教わりました。ならば、吟醸香とホップの相性は決して悪くないはずだと好奇心が踊ったことを覚えています。ホップは煮込んでいないため、理論上の苦味指数はゼロとなっています。日本酒酵母による発酵を介して、リンゴを原料にしたシードルのような果実感が得られました。また、上富良野産カスケードによるレモンなどの柑橘感と、ややスパイシーな余韻が漂います。9.0%ものアルコール度数は感じられず、品のある甘さと、凛と澄んだ味わいで、日本酒とビールの垣根を忘れてしまいそうな仕上がりになりました。なんと仕込みから半年に及ぶ長期発酵・長期熟成に肝を冷やしました。通常、麦汁の仕込みからビールが完成するのにかかる期間は約1ヶ月です。課題と収穫の両方が入り混じる結果となりましたが、まずは完成した喜びを噛みしめたいと思います。今後も日本独自の「Sake Culture」を取り込んだビールづくりへの挑戦を続けていきたいです。
ORIGINALS
amam
- ABV
- 9.0