麦の旋律

Vienna Lager

忽布古丹醸造は多種多様なビールの魅力を伝えるために、様々なビアスタイルを作ってきました。それでも、まだまだ作ったことのないビアスタイルが数多く存在します。今回もまた初めての挑戦になりました。1841年にオーストリアのウィーンで産声を上げたのは、Vienna Lager(ヴィエナ・ラガー)です。このビアスタイルは過去と現在で姿を変えているとされています。今回、私たちは過去の文献や研究をもとに、当時の味わいに近いものを再現しようと試みました。文献調査は数か月に及びました。Vienna Lagerは、麦芽が主役のビールです。今回のレシピでは、すべての麦芽を「Vienna Malt(ヴィエナ・モルト)」にしています。この麦芽は、1830年代初頭にイギリスで開発された新しい麦芽の乾燥技術に習い、オーストリアで製造されました。直火ではなく熱風で乾燥させた麦芽は、焦げ付きが少なく、淡い色合いの繊細なビールをつくることができる革新的な原材料でした。つまり、私たちにとって当たり前の「淡色のビール」はこの頃から誕生し始めたということを示唆しています。Vienna Maltを使ったこのビールは、キャラメルや濃いローストの香りを示さずに、軽くトーストしたパンのような豊かな穀物の風味が特徴です。ふくよかな飲みごたえもVienna Lagerらしさの1つです。色合いは通常のピルスナーなどと比べると琥珀色に近いのですが、濃色ビールが当たり前だった時代のビール飲みたちには驚くほど美しい色合いに見えたことでしょう。ホップの苦みと風味は控えめに効いています。発酵に由来する炭酸だけで溶け込ませた発泡性から訪れるフィニッシュはややドライでキレがあります。グラスに注ぐときめの細かい泡が立ち上がります。現在、その名前の由来となった都市でさえもほとんど醸造されていないVienna Lagerは、ビアバーやボトルショップでなかなか見かけないビアスタイルの1つです。もしかすると、このビールが初めての銘柄になる方も少なくないことでしょう。まさに、「液体のパン」と呼ぶのにふさわしいラガービールを体験してみてください。

ABV
5.0
IBU
25