AKIRAに傷心

Imperial Pilsner

私たちのアイデンティティである上富良野町産ホップに焦点を当てた「AKIRA」を冠するシリーズはこれで11回目。最近、めちゃくちゃ美味しいImperial Pilsnerを飲んだ私たちはそれを超えるものをつくってみたいという衝動に駆られました。しかも、それはただの真似事ではなく、大きな「捻り」を加えたものでなければなりません。その答えが「熟成リーフホップ」でした。上富良野町産ホップは、8月末から9月初旬に収穫したものをすぐに乾燥させて、ただちにペレットへと加工するのですが、たった1回分の仕込みに使えるだけの少量のリーフホップを保管していました。近年、「熟成ホップ」という信じがたい言葉を耳にする機会が増えました。特に私たち醸造士には「ホップは新鮮な方が良い」というのが常識でした。ところが、近年の研究によると、「ホップ由来の脂肪酸は発酵により 3 つの重要なエステル (イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、2-メチル酪酸エチル) に変換され、味覚の閾値が非常に低いため、ビールの風味と香りに寄与する可能性がある」という報告を見つけることができました。また、その研究ではホップの脂肪酸を増やすためには、ホップを熟成させるという選択肢が提案されています。保管条件は「リーフホップのまま20~30℃で約1年間が望ましい」というのだから驚きを隠せません。そんなことを知ってしまったら、やってしまうのが私たちです。8ヶ月熟成の上富良野町産ホップを麦汁にたっぷり投入し、恐る恐るこのビールの発酵が終わるのを見守りました。結果は驚くべきものでした。今まで私たちが感じてきた味わいとは全く異なるフレーバーが発現したのです。パッションフルーツ、パイナップル、スパイシーなどの気色の異なる性格は想像を越えるものです。もちろんこれらのフレーバーは今まで使ってきたホップの状態には存在しなかったものです。やや荒々しい主張のあるImperial Pilsnerになり、賛否は分かれるところだと思いますが、この異質さを皆様にも体験して頂きたいと思います。

ABV
6.5
IBU
35