Chu La Saison

Belgian Wit with Shekwasha

「南洋幻想(なんようげんそう)」という言葉があります。寒冷な地域に出生した人が「南の島」や「南洋」に憧れを抱く感情、あるいはその概念を指します。忽布古丹醸造のブルワリースタッフは様々な都道府県出身のメンバーで構成されてきましたが、現在の工場スタッフは図らずも全員が北海道出身です。もちろん、北海道に誇りを持っている私たちですが、喉から手が出るほど羨む原材料があります。それは「柑橘」です。温暖な気候を好む柑橘類は北海道の冷涼な気候で育てることは困難です。説明の必要がないほどに、ビールと柑橘の相性は抜群なのですが、それを地元産のもので賄うことができないのが忽布古丹醸造にとっての「無い物強請り(ないものねだり)」と言えましょう。さて、私たちが作るBelgian Wit(ベルジャンウィット)は、その「無い物強請り」が色濃く影響しています。これまで、「酢橘(すだち)」、「柚子」、「陳皮」などの柑橘や、柑橘の果皮を使用してきました。今回は、ずっと使いたかった沖縄産のシークヮーサーをBelgian Witに合わせました。ハプニングもあり、半年以上前から保管していた冷凍のシークヮーサーがありましたが、冷凍保管庫で紛失の被害に遭い、ずっと楽しみにしていた果実そのもの果汁や果皮の苦みや渋味まで効かせたリアリティーのある味わいを表現することは叶いませんでした。代わりに、急いで手配できるものがシークヮーサー100%の果汁でした。望んでいた果皮の苦みや渋味は伴いませんが、結果的に多くの人が楽しめる、非常に「綺麗」なシークヮーサーの酸味と、果汁の爽やかな柑橘の風味がもたらされました。セゾン酵母のクローヴやナツメグのようなフェノーリックなフレーバーは控えめなので多くの方にとって飲みやすい仕上がりです。シークヮーサーの酸味は、Belgian Witをサワーエールに近い存在へと導いてくれていて、夏向きのサッパリした味わいになりました。次はどんな柑橘を使いましょうか。

ABV
5.5
IBU
16