四季によって彩りを変える美瑛の丘陵は見るものの心を奪います。それと同時に私たちはこの景色から四季彩感覚を学んでいるのかもしれません。忙しない時代を生きる私たちに、自然が季節を教えてくれるかのようです。上富良野町の隣に位置する美瑛町には、2020年から開業したレストラン『SSAW BIEI』が美しい自然の中に佇んでいます。東京から移住してきたアートディレクター/フォトグラファーの前田景さん・料理家たかはしよしこさんご夫婦がお店を始めました。『SSAW BIEI』は、前田景さんの祖父であり風景写真家である前田真三さんが1987年美瑛に創設したフォトギャラリー『拓真館』の敷地内にあります。ラベンダー畑や白樺回廊など、ギャラリーの枠を越えた自然、写真、食事を体感できる空間として、多くの人々に愛され続けています。私たちも度々、お食事を楽しませて頂いておりました。7月中旬の夕方頃も、レストランで色彩感覚に富んだ彩り豊かなプレート料理を頂いたばかりです。その帰りのことでした。夕日に照らされたラベンダー畑が目に入り、そこでカートいっぱいにラベンダーを収穫したご夫妻をお見かけしました。そこでラベンダーやお酒についての立ち話をしたことが、このビールが生まれたきっかけとなったのです。風に漂うラベンダーの香りに魅了されて、ラベンダーを使ってみたいという気持ちを抑えられなくなりました。急なお願いだったにもかかわらず、快諾してくださったご夫妻には深く感謝しております。数日後には、ミツバチが音を立てて飛び回る中、ラベンダーを収穫しました。ラベンダー畑と、眼前に広がる小麦畑の丘からは多くのインスピレーションをもらいました。北欧に伝わる古代の醸造方法を再現した「麦汁を煮込まない製法」と、ふんだんに使った小麦麦芽によって、滑らかでシルキーな優しいタッチになりました。苦みはほとんどなく、穀物の豊かな風味が楽しめます。酵母の発酵によって複雑に変化したラベンダーと数種のボタニカルのフレーバーは美しいメロディーのように調和しました。ベルガモットのような爽やかな酸味があるため、心地よく喉を通り過ぎていくことでしょう。人との出会い、自然の恵み、発酵と醸造の技術、そして好奇心、それらが反応して偶然起きた「小さな奇跡」のようなボタニカルエールをお楽しみください。
- ABV
- 6.0
- IBU
- 10