私たちが醸造所を置くこの上富良野町は、北海道のど真ん中に位置することから「北海道のへそ」とも呼ばれています。つまり、北海道の中でも海から最も離れた地域で私たちはビールづくりをしています。そんな私たちはまるで「丘サーファー」のごとく、西海岸スタイルのビールづくりを得意としています。West Coast IPAはかつて、積極的な苦味を卓越性として売り込んでいた時期があります。しかしながら、苦味を高めれば高めるほど、一部の人には熱狂的に喜ばれるものの、一方で飲めない人も増えていくというジレンマを抱えています。今回私たちの作った【West Coast Strong Pale Ale】はWest Coast IPAの苦みを抑えたオリジナルのビアスタイルです。苦みを和らげたこのレシピでは、他の特徴であるシトラス＆パイニーが特に際立ちつつ、クリアネス＆ドライは堅実に守られています。採用したのは、Chinook、Simcoe、上富良野産Cascadeの3種のアメリカンホップ。今も色褪せることのない、私たちのお気に入りのアメリカンホップたちです。Simcoeについては濃縮ホップであるCryo Simcoeを使用して、トロピカル＆パイニー感を増強することに成功しています。お気づきの方もいるかと思いますが、New England IPAの誕生により主役の地位を奪われたかのように見えたWest Coast Styleですが、New England IPAを支える新しい品種のホップや、濃縮したホップ加工製品を取り込み、West Coast Styleはいまも進化・アップデートし続けています。最近ではトロピカルが優勢なWest Coast IPAも増えてきました。このWest Coast Strong Pale Aleもまた、Cryo Simcoeにより、クラシカルで硬派なWest Coast IPAよりも、トロピカルなフレーバーにチューニングされています。忽布古丹醸造は今後もクラシカルで硬派なWest Coast IPAも作りつつ、このように時代の波に乗った、自由で縛りのないWest Coast Styleのビールを作りながら、幅広い作り分けを実現し、ビールの多様性を多くの人に楽しんでもらいたいと願っております。