今回は世界を変えたビアスタイルです。このスタイルが生まれた19世紀は長い醸造歴史でもほんの最近の話です。しかしながら、このビールから派生したスタイルのビールは世界中で一番飲まれているアルコール飲料といっていいでしょう。ボヘミアン・ピルスナーのボヘミアはチェコ共和国の西部地帯を指しています。地元の「軟水」と「淡い麦芽」と恵まれたこと、そしてビール醸造技術の発達により、この黄金のビールが生まれたといわれています。結果、都会的で洗練された淡い色のビールが世界を席巻するのには時間がかかりませんでした。ワインが文化の酒ならビールはまさに文明産業の酒といっていいでしょう。水は「軟水」でおこない、仕込みは伝統的な糖化製法である「デコクション」で行いました。普通の多くの仕込みはインフュージョン仕込み（糖化時の調整であるお湯の温度を順次上げていく。雑味が少なくなる）に比べ、デコクションは一定量の麦汁を煮沸し元の麦汁に混ぜることにより全体の温度を上げます。麦芽殻自体を煮沸するので、麦芽殻からの抽出物そしてメラノイジンなど独特な風味がビールに残ります。甘みが残る口当たりになります。ホップとしては、チェコの有名なホップ、Saazをメインに使用しています。このホップの香りは古典的なピルスナービールに関連した名高い伝統を持つ、古典的なノーブルアロマホップです。また、今回は隠し風味として少量のSaphirとTettnangerも加えSaazの風味を豊かにしています。風味として麦芽の甘さとチェコのホップザーツの風味がピルスナーの中に見られます。王道のピルスナーになります。このビールの名前はMake haste slowlyは「急がば回れ」という意味です。紆余曲折の中、世界の源流になった偉大なるビール。人生一本道ではいきませんが、回り道も楽しみましょう。