無くて七癖

Saison

きめ細かい泡はシルクのようで、唇に触れた感触は柔らかく心地よい。焼き立てのパンのような香り、口に含むとレモンのような爽やかな酸味、バナナのようなエステル香と、花や蜜を想わせるフローラルな甘いフレーバー、そしてドライなボディに手が止まらない。胡椒のようなエッジと、土のような苦味は、飽きることを許させないアクセントとなり、グラスは瞬く間に空っぽになる。かつて農家が暖かい季節に喉の渇きを癒すために醸造されたセゾンは、水分補給の意味合いを持つことから、そこまで高くないアルコール度数を維持する必要がありました。現代のセゾンは明らかに水分補給の意味合いは薄くなり、どちらかと言うと嗜好品として世界中の人々に愛されるようになりました。今回の私たちのセゾンは現代的で、少し高めのアルコール度数と、フランス産ホップのミストラルによるレモン、洋ナシ、ほんのりマスカットのようなフレーバー効かせたモダンな解釈とも言えます。それぞれの個性が突出しているビールではないため、何の変哲もない普通のセゾンのように思われるかもしれませんが、忽布古丹醸造のビールはどれも7つくらいはこだわりのポイントや捻りがあるものです。すべてを開示すると、余白の部分が少なくなり、想いを巡らせる楽しみを奪ってしまうので全ては語りませんが、このビールにも後述のような捻りを加えています。高めのアルコール度数、フランス産ミストラルホップシングル、セゾンの王道の銘柄「Saison Dupont」をベースにしたレシピ、セゾン酵母のエステルを高めるための2つの方法、癖のあるネーミング、レギュラーで使用している菌株ではないセゾン酵母の使用、そして何より一番のユニークなポイントは双子の弟がいることです。そんな楽しみも心の片隅に留めておいてください。ただのセゾンと思う勿れ。

ABV
7.0
IBU
28