そんなAKIRAに騙されて

American IPA

「時代錯誤」とは思われるかもしれませんが、カスケードホップ100%のクラシカルなAmerican IPAを作りました。昨今は鮮烈なフレーバーのホップが続々と育種・開発されており、American IPAの黎明期を支えたカスケードホップは過去の存在になりつつあります。ところが、私たちはまだこのホップの最大値を引き出すことに余念がなく、また執念を燃やし続けています。それもそのはず。私たちが最も多く使用している品種がカスケードだからです。このホップを活かせずして「何が醸造士だ」という心持ちで向き合っています。今回のIPAは、上富良野産カスケードホップは100%ではないものの全体の約79%を占めています。この品種の限界値を推し量るにはアメリカの最新のホップ製品の手を借りる必要がありました。約20%の米国産カスケードクライオホップ(濃縮加工ホップペレット)と、1%の米国産カスケードのホップオイルを使い、重量は少ないながらも成分的には高濃度のドライホッピングを行ないました。ホップオイルは、海外では「未来のドライホッピング」とも呼ばれている革新的な製品で、溶剤などは不使用でホップ由来の成分のみを抽出しています。少量で一貫性のあるフレーバーを達成できるという品質向上のメリットと、ロスの大きな低減につながる経済的なメリットの2つが大きな魅力だと思います。ここまでやっても、最新の鮮烈なホップ品種を使ったときに得られるような最上級に強いフレーバーこそありませんが、カスケードホップのフレーバーの最大値に迫る挑戦ができたことに喜びを感じています。カスケードの説明に使用される代表的なワードである「シトラス」、「スパイシー」、「フローラル」はそれぞれ通常のペレットホップよりもかなり強調されました。オレンジの風船ガム、みかんなどの白皮(アルベド)のようなシトラスビター、オレンジピールのようなスパイシー感と、みかん果汁のような酸味。まるごと、みかんで醸したかのようなフレーバーになりました。疑似みかんフレーバーではありますが、そんなAKIRAに騙されてみるのも一興ではないでしょうか。

ABV
7.0
IBU
60