夜明け前

Munich Dunkel

どこかエモーショナルなビアスタイルである「Dunkel(ドンケル)」は、ドイツ語で「暗い、濃い」を意味するラガービールです。定義上の色合いの幅は広く、ほぼ黒いものからライトブラウンなものまで、意外と幅広い範囲があります。2年半ぶりにリリースしたこのビアスタイルは以前よりも色合いの濃いものを作りました。今回のレシピでは麦芽の焦げ感のある旨味を強く表現したかったため、旨味成分の濃い麦芽を選択し、麦汁を長時間煮込むことでメイラード反応という旨味成分の生成を強く促進させました。とはいえ、決して甘すぎるものではなく、ラガーらしくドライで程よい炭酸がありながらも、ほっとする懐かしい甘さ、言うなれば「べっこう飴」にも似た甘さを楽しめます。私たちがこのビアスタイルにエモーショナルを感じるのはこういった部分にあるのかもしれません。ドンケルはバイエルンの村や田園地帯のオリジナルのスタイルであり、 ビール純粋令(Reinheitsgebot :1516 年)の導入時には最も一般的なスタイルでした。そのため、この法令に「定義・規制」された最初のビールだったとも言えます。アルコール度数が 5.5% を超えることはほとんどなく、苦味は少なく、独特の濃い色とモルトの風味が特徴で、今もその特徴はほとんど変わらず愛され続けています。より明るい色のラガーは、麦芽のキルニング(焙燥)技術の進歩により製造が容易になった 19 世紀後半まで一般的ではありませんでした。いわば、技術革新前の主役だったビールは「ドンケル」だったのです。今ではニッチなビアスタイルになってしまいましたが、今でもこのビアスタイルの根強いファンは地ビール時代からのビール飲みに多い印象です。若い世代の人にもこのビアスタイルの魅力に気づいて欲しくて作りました。奇を衒わず、真剣に、伝統と向き合った渾身のドンケルです。

ABV
5.5
IBU
25